ゴルフウエアの誠実なるマイノリティ <チュース vol.1>

日本人が考えるスイスのイメージは、アルプスの山々に囲まれた豊かな自然と、そこに広がるラグジュアリーなウインターリゾート。世界中を魅了する、クラフトマンシップにあふれた時計…。場所柄、ウインタースポーツはすぐに頭に浮かぶが、なかなかゴルフとはつながってこない。

今回紹介するチュースはスイスで生まれたブランド。そのスタートはスキーウエアの製作だ。ブランド名であるチュースは創業者のひとりである、ノルウェーの世界的スキーヤーであった、ラッセ・チュース。現在は、スキーウエアばかりでなく、ゴルフウエアにおいても世界で高い評価を集めている。その横顔を、日本におけるチュースの正規輸入元でGMを務める豊田美穂さんに聞いてみた。

Q スイス生まれのスキーウエアのトップブランドがなぜゴルフの世界に?

A 冬はスキー、雪がなくなればゴルフというライフスタイルはスイスではめずらしくありません。もちろん人口が日本とは違いますから、ゴルファーの数はそれほど多くはありませんが。けれど比較的にリッチな層には、シーズンこそ違いますが、スキーとゴルフは同じくらい身近なスポーツです。実際、チュースCEOであるスイス生まれのニコ・セレーナも、創業者のひとりである彼の父も、若いころから大のゴルフ好きでしたから。ある意味、自然な成り行きだったのではないでしょうか。

Q 世界標準のスキーウエアで培ってきたモノ作りから受け継いできたものとは?

A チュースのウエアが掲げるテーマは妥協なきパフォーマンスです。これはスキーでもゴルフでもかわりません。私たちのスキーウエアがここまで認められたのは、最高の滑りをするためのあくなき追求です。アウターひとつでなんと300以上のパーツを組み合せて作られています。袖だけでも50パーツ以上。これらを人の手で縫い合わせてひとつにしていく。いくら過酷な雪山でスキーをするからといって、ここまでのこだわりは日本のウエア作りの現場では想像できません。もちろんゴルフウエアにはこれほどのパーツは必要ありません。けれどプレーをする環境やプレーヤーの動きを考えて、いくらでも作り直し、手間を惜しまず作業していくスタンスはまったくかわりありません。緻密な手作業を繰り返す、スイスの高級時計を手がける職人を見ているかのようです。

Q ゴルフウエアを手がけるときのチュースならではのものとは何でしょうか?

A いちばん大切にしているのは素材選びだと思いますね。ベースになる機能素材は実は日本製が多いのです。値段でいうのは…ですが、高級なスーツに使われる上質な天然ウールと変わらないくらいのものといったらいいでしょうか。こうした素材をゴルフウエアに用いることはほとんどないです。伸縮のあるソフトな質感で、まさに着ていることを忘れてしまうようにナチュラルにフィットして、スイングしたあとも決して体にまとわりつくことはありません。そんな上質な素材をパーツごとに、体に貼りつけるかのように縫い合わせていきます。ですからチュースのウエアは細いハンガーにかけても、前後がぴったりとつくことがなく、わずかに空間が残ります。またそうした構造ですからきれいにたたむことができません。これこそ最高の素材とそれを生かすための縫製ゆえなのです。

Q 一方でデザインは見慣れたゴルフウエアに比べるとかなりシンプルですが?

A チュースは勝負するのはデザインではなく、素材であり、その素材を生かす縫製であると考えています。もちろんチュースにもプリント総柄のポロシャツもあります。けれどチュースが最高と考える素材は、プリント加工には適していません。うまくプリントできないものの方が、実は素材としてのクオリティが高いのです。そしてステッチも極力省いています。たとえばポロシャツの襟の縁や前立ての表面に、ステッチが入ることはごく自然です。けれどそのステッチが素材にダメージを与えることを彼らは知っています。ですから必要最低限しかステッチを用いません。こうしたスタンスが見た目のシンプルさにつながっているのかもしれません。

Q スイスをはじめ海外でのチュースのポジショニングは?

A 現在世界30カ国以上でウエアを展開しています。ヨーロッパの高級スポーツショップやセレクトショップには、冬はスキーウエア、それ以外のシーズンはゴルフウエアが置かれたチュースのコーナーがあります。ですがよそのブランドとは違って、胸のワンポイントすら入れず、優れた素材であればほんのわずかなデザインの変更はあっても、毎シーズン繰り返して展開する。ぱっと見ただけなら、前のシーズンとほとんど変わらない、シンプルなアイテムがディスプレイされていることもめずらしくありません。それでもチュースが考える本当の上質を理解してくれるゴルファーは間違いなく増えてきています。

次回は人気アイテムを取り上げながら、チュースの魅力を教えてもらう。

豊田美穂/チュースの日本正規販売代理店、ノースブレインのゼネラルマネージャー。数多くのアパレル現場での経験から、チュースの上質さを、身をもって理解するエキスパート。

チュース(ノースブレイン) tel:011-632-5106