HALF TURN BREAK – 超富裕層ゴルファーのマネーライフ –

ビル1棟の“バラ売り”はなぜ生まれたのか。 アセットマネジメントに革命を起こした気鋭の経営者の「頭」をのぞく

オフィスビルをフロア単位で購入する「区分所有オフィス」。ユニークな商品を開発したボルテックス・宮沢文彦社長に日経BP 総合研究所の所長・酒井綱一郎が迫る。

そもそも「区分所有オフィス」とは何なのか

酒井 今日は聞きたいことが山ほどあって、お会いするのを楽しみにしていたんですよ。まずは何と言っても、ボルテックスさんの代名詞、「区分所有オフィス」についてお聞かせください。
宮沢 分かりやすく言うと、「マンション感覚で購入できるオフィス」です。まず当社でワンフロアの面積が約660㎡以下、延べ床面積が約3300㎡程度の中規模ビル(売買価格10億~50億円)を1棟買いしてリフォームする。次に管理組合を作り、長期修繕計画の策定などをしたうえで、フロア単位でお客様に提供します。中小企業の経営者様が、1棟数十億円のビルを丸ごと買うのは難しいが、ワンフロアなら手が届くのではないか。そう考えたのです。
酒井 言わば、ビルの“バラ売り”ですね。なじみの薄い商品だけに、リスクを気にする人も多いでしょう。
宮沢 当然、気にされるお客様はいらっしゃいます。とはいえ購入後にかかるコストや権利関係、賃借人の属性、空室率といったリスクは、他の不動産も同様であり、当社は販売前に極力排除します。例えば、空調や水廻りの故障などで生じる突発的な工事費は通常、オーナーが負担します。しかし、当社の物件では組合が負担するので、支出は積立金のみで済む。また、空室は貸し手にとって大きな懸念材料ですが、当社の管理物件の空室率は面積ベースで1.62%。平均空室期間も3カ月程度です。※平成28年10月時点
酒井 ずいぶん低いですね。
宮沢 当社取り扱い物件の95%は、東京23区内にあります。このエリアで、空室が長期継続することはあり得ません。空室が長期間続くのは多くの場合、プライシングのミスが原因です。私たちなら、その対策もサポートできる。
酒井 メインの顧客はどういう人たちなのですか。
宮沢 最も多いのは、中小企業もしくは、その経営者様です。

オフィスを「バラ売り」で持つメリットは何か

酒井 それは、どのようなニーズがあってのことなのでしょうか。
宮沢 皆さん、事業継続性を高めるための収益源として活用されています。賃貸業は管理費や固定資産税以外に、ほとんど経費がかかりません。そのため、利益率が高い。ですから一度、購入していただくと継続して複数の物件を取得されるお客様も、少なくありません。実は貸事務所業は、トップクラスの“長寿業種”です。100年以上、続いている日本企業の多くが、不動産による賃料収入を得ています。本業以外に賃料収入を得ている企業の方が、事業の継続性が高い傾向があります。
酒井 仮に本業が不振に陥った時でも、賃料収入があれば財務面での“下支え”ができる。場合によっては、低迷期を乗り切ることだって可能ですね。不調が5~6期続くと、非常に危ない状態に追い込まれかねませんから。
宮沢 企業が不動産を購入する場合、多くは本業に関連する物件です。例えば製造業なら、地方に工場を建てたりしますよね。ただ、これは資金繰りに困った時に、売ったり貸したりできません。本業と関係ない不動産なら、困った時は売ることもできる。
酒井 それなら狭小地に立つ、いわゆるペンシルビルを買ってもいいですよね? 日本人は土地に対する思い入れが強い。土地がある方が何かと便利では?
宮沢 当社ではペンシルビル「1棟」ではなく、中規模ビルの「1フロア」をお薦めしています。というのは、まずテナント目線で見た場合、中規模ビルと比べ、ペンシルビルは共用部分の充実度で劣るなど、使い勝手に難があります。その分、賃料が抑えられてしまう。例えばエントランス。来客などの場面を考えると、広くて立派な方が望ましいでしょう。また、約660㎡のスペースを使う場合、「約66㎡を10フロア」よりも「ワンフロア約660㎡」の方が便利ですよね。次に需給のバランスを見てみます。実は中規模ビルはこの25年、ほとんど増えていません。一方でテナントとなる中小企業の数は、東京を中心に増え続けている。
酒井 なるほど。首都圏では供給が需要を下回る状況がずっと続いているから、長期に亘り高く貸せるんですね。
宮沢 付け加えると、ペンシルビルに比べ中規模ビルは建て替えで価値が跳ね上がることが多いのです。再開発で土地の実勢価格が数倍になることも、珍しくありません。

イノベーションを生む「宮沢流思考法」とは

酒井 お話をうかがっているとボルテックスという会社は不動産業というより、中小企業の財務指南役ですね。
宮沢 実際、最初の商談では物件を薦めたりはしません。専ら、財務の悩みを聞くだけ。中小企業が長く事業を続けていくために必要な、投資や財務戦略のサポートが、私たちのミッションです。
酒井 不動産はそのための、“手段”にすぎないというわけですね。とはいえ類を見ないサービスです。パイオニアゆえの苦労も多かったでしょう。
宮沢 10年前、区分所有の物件購入に対して融資してくれる金融機関はほとんど、ありませんでした。物件の取扱量が増えた今でこそ、約50行とお付き合いさせていただいておりますが、それでも十分に理解してもらっているとは言いがたい状況です。
酒井 世間の“常識”と宮沢さんの考え方には大きな隔たりがある。
宮沢 はい。ただ、物事の本質は世間で「正しい」とされていることの裏側にあると私は思っています。そういう見方をするのは、性分なのかもしれませんが…。子供の頃からへそ曲がりだったんですよ(苦笑)。
酒井 そこが宮沢さんのイノベーションの“原点”だったのですね。今日は興味深いお話を、ありがとうございました。

vort%e5%a4%96%e8%8b%91%e5%89%8d%e3%83%a1%e3%82%a4%e3%83%b3

狭小地の一棟所有と区分所有では使い勝手の良さやメンテナンス費用の安さなどの面から、区分所有に分があるというのが、ボルテックスの考え方だ。区分所有オフィスは、再開発などで建て直す時に地価が跳ね上がるなど「プラスアルファ」が期待できるのも魅力の一つ。写真はボルテックスの管理物件「VORT外苑前Ⅰ」

株式会社ボルテックス 0120-285-191 https://www.vortex-net.com

ボルテックスとは1999年設立。中小企業とその経営者などに対して、不動産投資を軸にした資産形成のコンサルティングを行っている。売上高425億円、経常利益78億円、受託資産残高
1,080億円(すべて平成28年3月期)。

 

ゴルフを楽しんでいる間に、お金があなたのために働いてくれたなら?

Aiming for the good life !

2016-06-08-05.56.07

ゴルフを通じて人生を謳歌するDE読者の皆さまは、ビジネスやプライベートで忙しい毎日をお過ごしのことだろう。だが慌ただしい日々の中、ふと家族のこと、将来のことに考えをめぐらすことはないだろうか。日本ではファミリービジネス(同族経営)が全法人数の約90%を占め、経済を支える存在となっている。多くのファミリービジネスが団塊世代を中心に事業を営む中、経営者が「事業・資産承継」に頭を悩ませる時代となった。世界経済の先行きが不透明な今、このまま何も手を施さなかったら、成長した事業や築き上げてきた資産はどうなるのだろうか。そんな不安に駆られるのは一人だけではない。もしゴルフを楽しんでいる間、お金があなたのために働いてくれたなら? 資産運用とは、あなたのためにお金が自分自身で働いてくれるよう、道筋をつけること。このコラムでは、バトンを手渡す側、受け取る側双方にとって必要不可欠な資産形成について考えていきたいと思う。

まずは年初からの市場環境について振り返っておきたい。2016年の金融市場は大荒れの幕開けとなった。毎年末には各金融機関から翌年の経済や市場を展望するレポートが発行されるが、どのレポートでも年初からの急変は予測できていなかった。

主な要因は、昨年末に実施された9年半ぶりの米国の利上げだ。未だ経験のない金融緩和後の利上げにより、各国市場への様々な影響が懸念された。これに加え、世界に顕在する数々のリスク要因が投資家の感情を悪化させた。中国経済の失速、サウジアラビアとイランの断交、イギリスのEU離脱問題、北朝鮮のミサイル実験など、これほどの懸念が同時期に噴出しては金融市場には大きな痛手だ。

今年に入ってから世界株式は一時−15%前後まで下落した。中でもひときわ下落幅が大きかったのが中国株式と日本株式(どちらも約−22%)だ。一方で米国株式の下落率は9%程度だった。3月18日に行なわれた米国連邦準備制度理事会の公開市場委員会(FOMC)にて、年内の利上げを4回から2回へと緩やかなペースへ見直された。これにより報道では米国経済の不調を論ずる傾向が強まっているようにもみえるが、他の市場と比較すると米国株式市場は堅調なパフォーマンスを維持しており、むしろ米国経済の底堅さがうかがえる。

日本では最近の円高傾向から企業収益の低下懸念が頭をもたげ、株価の頭打ちが囁かれている。日銀や財政といった政府の景気刺激政策頼みのいわば「催促相場」といった様相の中、日銀の金融政策による効果の限界や政策手段のネタ切れ、アベノミクスの賞味期限切れなど、市場では否定的な意見も多く株価の見通しも悲観論に流れがちだ。しかし、株式アナリスト等による「バリュエーション(相対的な株価価値水準)から推して、日本株は売られすぎ」との見解もある。本コラム執筆時の3月下旬時点において、株価のバリュエーションを測る代表的な指標PER(株価収益率)からみても「売られすぎ」といえるのではないか。

日本株の低迷には、特に外国人投資家の日本株離れが大きく影響している。因って今後の日本株市場の見通しは、グローバルな市場を投資対象とし長期安定的な運用を手掛ける機関投資家等プロの投資家が、中長期的な視点で保有資産の配分を考える際に、投資先の一つとして日本株に魅力を見出すかどうかにかかっている。明るい日本の未来が描けなければ、世界の投資家が長期的に日本株に投資することは難しいだろう。そのためには「骨太」の実行力のある政策が打ち出されることが望まれる。財政再建、人工知能やロボット等優れたテクノロジーを国策として育てる産業政策、女性の社会進出・出生率の向上・外国人就労者の就業機会拡充の促進といった社会インフラの整備等、即効性はなくとも将来の日本経済の基盤整備・強化を目指した政策の実行こそ、グローバルな投資家から日本が再評価されるための方策なのではないだろうか。

世界中の様々なイベント、リスク要因や政治的な動きによって刻々と変化し、先を読むのが極めて難しい金融市場。日本の参議院選に加え、米国大統領選挙やEU離脱の可否を測るイギリスの国民投票など今年は選挙の年でもあり、その結果次第で金融市場はさらに激変する可能性がある。「運用といっても、この荒海の中で資産をどう守り増やしていけるのか」とお悩みの方も多いだろう。

資産運用もゴルフになぞらえることができる。ゴルフであれば、14本の武器をどの場面でどのように使いこなしてスコアをまとめていくのか。資産運用であれば、現預金、株式・債券、投資信託など様々な運用商品を駆使して、いつ何に投資しどういった運用戦略を考えるべきなのか。キーワードは資産運用の王道ともいえる「分散投資」だ。次回以降は、「なぜ資産運用が必要なのか」の基本のところから、「分散投資」のあり方まで、順を追って考えていきたい。

ゴルフも市場も、なかなか自分の思惑通りには動いてくれないもの。本コラムが、読者の皆さまがご自身の資産形成を見直すきっかけとなれば大変うれしく思う。